毎日夕方になると東のほうの村から
三人の親子のかつぎ屋が
驛に向つてこの部落をとおる
母親と十二、三歳の女の子と
まだ十になつたとも思われぬ男の子だ
めいめい精いつぱいに背負い
からだをたわませて行くかれら
ずん/\暮れるたんぼ道を
かれらはよく小聲をあわせてうたつていく
そのやさしくあかるい子供うたは
いちばん小さい男の子をいたわり
またみんなをはげまして
小聲の一心な合唱が
うず高い荷物の一かたまりからきこえる
それは露骨な生活の間を縫う
ほそい清らかな銀絲のように
ひと筋私の心を縫う
(いまどんなお正月がかれらにきているか)
伊東静雄
「「反響」以後」所収
1953