まちなみのなつかしい灯とおもつて
いそいでわたくしは雪と蛇紋岩との
山峡をでてきましたのに
これはカーバイト倉庫の軒
すきとほつてつめたい電燈です
(薄明どきのみぞれにぬれたのだから
巻烟草に一本火をつけるがいい)
これらなつかしさの擦過は
寒さからだけ来たのでなく
またさびしいためからだけでもない
宮沢賢治
「春と修羅」所収
1922
まちなみのなつかしい灯とおもつて
いそいでわたくしは雪と蛇紋岩との
山峡をでてきましたのに
これはカーバイト倉庫の軒
すきとほつてつめたい電燈です
(薄明どきのみぞれにぬれたのだから
巻烟草に一本火をつけるがいい)
これらなつかしさの擦過は
寒さからだけ来たのでなく
またさびしいためからだけでもない
宮沢賢治
「春と修羅」所収
1922