Tender

二つの道がある
言い淀んだその後に惨めな川が生まれる
流れるでも滞留するでもない

軸のないカラダになってしまった
軸のないカラダになってしまった

例えなければ、それはただの
あまりにも
ただの

ん苛々するナァ

なんやようわからん植物を
ブドウと思って口に入れたときの
人生の方がよかった

食う前からまずいと決めて馬鹿野郎が
能書き垂れよる
能書き垂れよる

ワシわなぁ
轢き殺されたいときかあるんじゃ
気に食わんからのう
ズルしよるやろ
みんな、ズルしよるやろう
こんな世界で生きてナァ
何になるんや
そこのアンタ
詩なんか書いてアンタ
なんか答えてみぃや
黙っててよう、何のための詩ぃか

睨みつけてばっかり

人生が素晴らしいと言うんなら

心から誓えるか
叫べるんか

ゆうてみろや

派遣社員
泥だらけ途中下車
右膝ジーンズの穴
穴、穴ぼっこ
こりごりの穴ぼっこ
左膝、擦り切れた糸くず
有り金はたいて給料取りに行く
嘘みたいな巧妙
ヘルメット代、制服代
べんきょ出来ないからよくわからないけど何かの保険
言いくるめられた
そう言えばあの時も言い淀んだな

流れるでも滞留するでもない

軸のないカラダになってしまった
軸のないカラダになってしまった

例えなければ、それはただの
あまりにも
ただの

苛々する
苛々して何かしでかすくらいなら
そのまま竜巻にぶち切られて、その終わりと共に消えたい

うまく生きられへんから

うまく生きられへんから

クヮン・アイ・ユウ
現代詩投稿サイトBREVIEWより転載
2018

石をひろっては
投げる

石をひろっては
投げる

そうして
胸のなかのものを
捨てていった

杉山平一
杉山平一詩集」所収
1978

水底で星になることだってできる

時間の経過に身をまかせるなら
みずからときをきざんでたゆたい
空をひろげていって だから
物のつながりで今を判断するな
ぬるぬりのぶすぶさの泥ねいのみぞで
ポリプのように生きるとも
水底で星になることだってできる
つくることをすっかり忘れ
事物を分析し きらめく糸をつむいでいけば
わたしは蓮華の下で落花生となり
浮きあがり
見えない風の滝のぼり
いつまでもうずまいている
あれらの球はくびれがあって
つきでているのに
まんなかはぬれているくぼみではないか

岡田隆彦
「海の翼」所収
1970

夜毎

深いネムリとは
どのくらいの深さをいうのか。
仮に
心だとか、
ネムリだとか、
たましい、といつた、
未発見の
おぼろの物質が
夜をこめて沁みとおつてゆく、
または落ちてゆく、
岩盤のスキマのような所。
砂地のような層。
それとも
空に似た器の中か、
とにかくまるみを帯びた
地球のような
雫のような
物の間をくぐりぬけて
隣りの人に語ろうにも声がとどかぬ
もどかしい場所まで
一個の物質となつて落ちてゆく。
おちてゆく
その
そこの
そこのところへ。

石垣りん
表札など」所収
1968

惑星メメシス

わたしはかんしょう的になって空とぶ

だれもいない砂漠で
黒い肌をした人間がみたことのないダンスをおどっていたので
それを描写しようとしてあきらめた
わたしにはなにもかけない事を
また知らされる
特に書く必要のない存在をかきとめようとする
わたしのこころは
本当につまらないね

つまらないが
しかし、
かくために必要な理由をいつもさがしてる
探したところでなにかあるわけでもない
ただ、いきるために
必要なじかんを

世界中の
唇の気持ち悪さについて
例えば気持ち悪いと思う感情について、
光が窓を通り越して
部屋のなかを明るくする理不尽さ
壁を作れば問題ないというのは
技術があるやつの言い分
そんなものつける理由に乏しすぎる
光をさえぎるためだけなんて

いやいや壁はもっと大事
風や音を遮る
人間を遮る
鳥の鳴き声も
車の音も
それから、
何かを飾れるはずだよ
ひつようなものを
カレンダーとか
絵や花とかを

そういうのは
もう
うんざりだ
そのためだけに壁を作る技術
身につけるのは
ああ、
それをこうして
全部
描かないといけないのも
どうでもいい
わたしは
暗闇に産まれればよかったのか
でも、暗闇に飽きたら
光を求めて
壁の壊し方を覚えようとする
わたしは
わたしの素手ではなにも壊せないことを、知っている
だから
わたしはかいているのだ。
書の中で壁を壊すために

いつも
たどりつく地平は始まりの場所で
極論で
生きられる場所は
終わりの場所だ
ここにあるとすれば
すべて
均衡の問題
反吐が出るほどの仕方なさが
本当に
本当に優秀な死は
10代で輪廻しているのだから
だって
もう二度と
このフィクションを楽しめない
身体に生まれてしまったからには

朝から目覚めてあらゆる存在に気がついてしまえばなにもかも病気になってしまって、わたしはなにもできない小さな唇を開いて大声で泣いたら怒られたので泣きながらうじうじしていた。なぜ、私は私らしく遅刻したり、一日中寝ていたり、部屋でゴロゴロしながらゲームしたりし続ける事を許されていないのか。私は私らしくいきたいのだ。一日中どうでもいい感情でどうでもいい疑問を抱えながら、理不尽に怒られて罵倒されて、罵倒された言葉で落ち込んでその恨みを書きつけてだれかに可愛そうといってもらいたい。世界で一番かわいそうなやつだと言われたいという、感情。

わたしらしさ。という
これは女々しさ
というらしいよ。
いっぱんてきにね

くだらねぇよなぁ?

わたしはどんどんあきらめていく世界で1番あきらめたにんげんになりたい。
泣いていたい
そういう感情が大事だってことつたえたい
大事なかんじょうなんてどこにもないのにね。

毒をはいていたい
嫌われていたい
そして同時に好かれたい
世界で一番なにもしていたくない
こうして書いているのもうんざり
なにも表現したくない
伝えたくない
大事なことなんて、もうすでに誰かが仕事している
わたしなんていらない

何かを書き始めるときに
酩酊が必要なのは
上に書いた感情が邪魔で
それらをそぎ落とすため
毎日生きていると
襲ってくる黒い鳥が本当に邪魔だけど
みんな
そういうやつらと戦いながら書いてるんだろう
意味もなく
でも大事な何かのために
もしくは
遊びのために
もしくは
まじめにふまじめに

反論はすでに用意されているから
ここに書いた話は
対話するためじゃない
わたしのなかの話として
大事なだけ
あなたは
相対的にそういう立ち位置にいる
わたしも
あなたとは違うところにいる
社会よ
くたばれ
わたしに必要じゃないもの以外をのこして

百均
現代詩投稿サイトBREVIEWより転載
2018

右利き

お箸はきれいに持てるかい
さっきの彼は右に並んでいて
そっちに重心が傾いているんだね
あなたは。

頬杖は両方でつくと善いよ
顎関節が歪むのでね
先生は視力にも利き目があると言っていたが
狭い視界でひとり静かに
一体なにを納得してゐるのだ
あなたは。

そうしていづれ
好いことを思いつく

ひだりならもしかして
ひだりならいいんじゃないかな
ひだりくらいならいいかな

ひだりくらいなら
ひだりだけならいいかも
ひだりだけなら

ひだりだけなら

ほうらねえ、

ひだりくらいどうってこたあないじゃあないか

ほうらみて、
ひだりなんだしどうってこたあなかったろう?

ほうら、よく、みて

しょせんひだりだもの
こんなものだ
だから大丈夫、

ひだりだからね

次郎
現代詩投稿サイトBREVIEWより転載
2018

歓楽の詩

ひまはりはぐるぐるめぐる
火のやうにぐるぐるめぐる
自分の目も一しよになつてぐるぐるめぐる
自分の目がぐるぐるめぐれば
いよいよはげしく
ひまはりはぐるぐるめぐる
ひまはりがぐるぐるめぐれば
自分の目はまつたく暈み
此の全世界がぐるぐるとめぐりはじめる
ああ!

山村暮鳥
風は草木にささやいた」所収
1918

探したー子供たちのように Ⅰ 

不滅なものは信用できない
おお、ぼくの友だち、絶望が不当に傷つけたさびしい少年
つらいぼくの夢はおわったさ
ながーい不信がかがやかす
荒廃した郊外いっぱいひろがった夢
夢はいつだっておわったあとで夢みられる夢だぼくは
もうすでに出立したんだこのぼくのなか
みえっこないほど深いセンチメンタル・ジャーニー
知らなかったかい?ぼくは
終始いつだって誰れでもなかった誰れひとり
ほんとうにぼくたちの誰れであることもできなかった
それでもはじめるしきゃなかったんだよ、ぼく
狂気と永遠を区別することから
純潔と性的倒錯を熱烈に混ぜあわせることから
恐怖だけが純潔だなんて!くそっ
そいつをかんがえると口惜しくなってきて
ああ、ほとんど泣きだしちまいたくなるくらいなんだなあ
ぼくがおしまいまで巧くやってゆけないかどうか
そんなことぼくがどうして知るもんか
ちぇ、どんないろしてるんだろ?ぼくの
怒りや焦りやたまんない衝動のいろ?
ぼくの知らないぼくの青春の
皮膚のいろって、え?
ぼくは探した探した探した
探しためまいのするほどぐるぐる廻って
おおきな積木とちいさな影のあいだで
一日じゅうケンケンをしてくたびれきった
子供たちのようにくたびれるまで
探した探したこのぼくがいまここにいる
場所と名まえ

長田弘
メランコリックな怪物」所収
1973

バケツのかたちの水を
かたむけ
パッと 放おると
菱形にゆがんで浮いたのも束の間
コンクリートに叩きつけられ
悲鳴をあげてペチャンコになり
助けを求めるように触手をのばし
すこし もがいていたが
ひっそり 息絶えた

杉山平一
青をめざして」所収
2004

遠くの路を人が時時通る
影は蟻のやうに小さい
私は蟻だと思つて眺める
幼い児が泣いた眼で見るやうに
それをぼんやり考へてゐる

原民喜
かげろふ断章」所収
1924