会議室にて
机の前にたくさんの顔が並んでいる。
血のかよっている
笑ったり怒ったり話したりする顔
いつかみんないなくなる顔
とじられる目
つめたくなる唇
からっぽのがいこつ、
けれど永久になくならない
次々と生まれてくる顔
やがては全部交替する顔
それをじっとみまもっている
その交替をあざやかにみている眼——
それがある、きっと。
それが誰だかわからない
ひとり、たしかに一人いるのだが。
石垣りん
「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」
1959
会議室にて
机の前にたくさんの顔が並んでいる。
血のかよっている
笑ったり怒ったり話したりする顔
いつかみんないなくなる顔
とじられる目
つめたくなる唇
からっぽのがいこつ、
けれど永久になくならない
次々と生まれてくる顔
やがては全部交替する顔
それをじっとみまもっている
その交替をあざやかにみている眼——
それがある、きっと。
それが誰だかわからない
ひとり、たしかに一人いるのだが。
石垣りん
「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」
1959