砂浜に坐って波を数えた
まぶしい光の子供たちがたくさん
海の上で手をつないで踊っている
真夏だった
シャラシャラシャラと寄せて返す波を
いくつもいくつも数えた
夜になっても数えつづけた
月が出て 星がたくさん出てきて
やがて日が昇った
二十万まで数えた時、月が欠けた
四十万まで数えた時、月が満ちた
三億を超えたところで眠くなった
目が覚めたら、何千年かが過ぎて
ぼくは石になっていた
そこは今は海の中で
波の音は聞こえない
光の子供はずっと上の方で踊っている
ぼくは今度は何も数えず
また眠った
池澤夏樹
「この世界のぜんぶ」所収
2001
「波かぞえ」は池澤夏樹さんの承諾を得た上で掲載しております。無断転載は禁止です。
上記の詩を読んで興味を持たれた方は是非下記のサイトものぞいて見てください。
池澤夏樹公式サイト Cafe impala
http://www.impala.jp
Facebook
https://www.facebook.com/NatsukiIkezawa
池澤夏樹に個人編集による日本文学全集、絶賛発売中です!
http://www.kawade.co.jp/nihon_bungaku_zenshu/