黒板

病室の窓の

白いカーテンに

午後の陽がさして

教室のようだ

中学生の時分

私の好きだった若い英語教師が

黒板消しでチョークの字を

きれいに消して

リーダーを小脇に

午後の陽を肩さきに受けて

じゃ諸君と教室を出て行った

ちょうどあのように

私も人生を去りたい

すべてをさっと消して

じゃ諸君と言って

 

高見順

死の淵より」所収

1964

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