少年の日

1

野ゆき山ゆき海辺ゆき

真ひるの丘べ花を敷き

つぶら瞳の君ゆゑに

うれひは青し空よりも。

2

影おほき林をたどり

夢ふかきみ瞳を恋ひ

あたたかき真昼の丘べ

花を敷き、あはれ若き日。

3

君が瞳はつぶらにて

君が心は知りがたし

君をはなれて唯ひとり

月夜の海に石を投ぐ。

4

君は夜な夜な毛糸編む

銀の編み棒に編む糸は

かぐろなる糸あかき糸

そのラムプ敷き誰がものぞ。

 

佐藤春夫

殉情詩集」所収

1921

One comment on “少年の日

  1. のゆきやまゆき、この詩はなんとなく、人々のなかにあり。後世に影響を与えてると思います。詠み人知らずはひとつの歌の達成かと

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