みろ
太陽はいま世界のはてから上るところだ
此の朝霧の街と家家
此の朝あけの鋭い光線
まづ木木の梢のてつぺんからして
新鮮な意識をあたへる
みづみづしい空よ
からすがなき
すすめがなき
ひとびとはかつきりと目ざめ
おきいで
そして言ふ
お早う
お早うと
よろこびと力に満ちてはつきりと
おお此の言葉は生きてゐる!
何という美しいことばであらう
此の言葉の中に人間の純さはいまも残つてゐる
此の言葉より人間の一日ははじまる
山村暮鳥
「風は草木にささやいた」所収
1918