詩集の美シリーズ。本日はカニエ・ナハさんの「多島海のための舞踏会をめぐる三十の断章あるいはダンスショウ」を紹介いたします。
この詩集を紹介するに当たっては少し説明が必要になります。
2015年9月、表参道にあるスパイラルで開催された創立30周年記念企画として「スペクトラム展」が開催されました。これは現代美術の作品を、その作品にインスパイアされて作成された詩とともに展示するという斬新で意欲的な企画でした。詳細はこちらに記事にしていますので、よければご覧ください。
この企画の中で限定30部として特別販売されたのが今回紹介しておりますカニエ・ナハさんの「多島海のための舞踏会をめぐる三十の断章あるいはダンスショウ」となります。(長いタイトルなので以下は「多島海」とします。)
三十周年記念なので、三十の作品を限定三十部!
このようにばらばらになっている詩の印刷された紙が半分に折られて30枚集められひとつのまとまった詩集として提示されています。
面白いのは「ばらばらになった紙」というところで、読者が好きな順番に入れ替えることが出来るという所ですね。
詩篇は読んでみると一つの流れとしてまとまったものもあり、どのような順序で書かれたのか、想像してみるのも楽しいです。読者のセルフサービスで編集できる詩集といったところでしょうか。
発想の元になっているのはこちらの毛利悠子さんの作品「アーバン・マイニング 多島海」です。実際の街灯を使って製作された大型のオブジェと小さな街灯の模型とプレスした空き缶を組み合わせたインスタレーション。
カニエさんの詩作品「多島海」はスペクトラム展の「詩の公開製作」というイベントで作成されました。5時間で作品を作り上げ、詩集の形にまとめ上げるという、いわば「即興詩集」です。時には何年も掛けて推敲する詩集とは真逆の手法ですが、それがかえって言葉の勢いとなり、読者に迫ってくるように感じられます。
残念ながら、限定三十部で販売された作品なので、書店等で入手することは出来ないのですが、今回はカニエ様から許可をいただき、この中から私が独断と偏見で選んだ二篇を紹介したいと思います。
こちらです。
その1
その2
また、カニエさんは今年「用意された食卓」という新たな詩集を上梓されております。こちらはもちろんAmazonでも入手可能です。第21回中原中也賞を受賞されております。興味を持たれた方はぜひどうぞ。