罪なれば物のあわれを

こゝろなき身にも知るなり

罪なれば酒をふくみて

夢に酔い夢に泣くなり

 

罪なれば親をも捨てゝ

世の鞭を忍び負うなり

罪なれば宿を逐われて

花園に別れ行くなり

 

罪なれば刃に伏して

紅き血に流れ去るなり

罪なれば手に手をとりて

死の門にかけり入るなり

 

罪なれば滅び砕けて

常闇の地獄のなやみ

嗚呼二人抱きこがれつ

恋の火にもゆるたましい

 

島崎藤村

落梅集」所収

1901

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