朱のまだら

日射しの

緑ぞここちよき。

あやしや

並たち樹蔭路。

 

よろこび

あふるる、それか、君、

彼方を、

虚空を夏の雲。

 

あかしや

枝さすひまびまを

まろがり

耀く雲の色。

 

君、われ、

二人が樹蔭路、

緑の

匂ひここちよき。

 

軟風

あふぎて、あかしやの

葉は皆

たゆげに飜へり、

 

さゆらぐ

日影の朱の斑、

ふとこそ

みだるれわが思。

 

君はも

白帆の澪入りや、

わが身に

あだなる戀の杙。

 

軟風

あふぎて澪逸れぬ、

いづくへ

君ゆく、あな、うたて。

 

思ひに

みだるる時の間を

夏雲

重げに崩れぬる

 

緑か、

朱か、君、あかしやの

樹かげに

あやしき胸の汚染。

 

蒲原有明

有明集」所収

1908

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