霜と聖さで畑の砂はいっぱいだ

霜と聖さで畑の砂はいっぱいだ

   影を落す影を落す

   エンタシスある氷の柱

そしてその向ふの滑らかな水は

おれの病気の間の幾つもの夜と昼とを

よくもあんなに光ってながれつゞけてゐたものだ

   砂つちと光の雨

けれどもおれはまだこの畑地に到着してから

一つの音をも聞いてゐない

 

宮沢賢治

詩ノート」所収

1926

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください