Bei Hennef

 The little river twittering in the twilight,

The wan, wondering look of the pale sky,

             This is almost bliss.

 

And everything shut up and gone to sleep,

All the troubles and anxieties and pain

             Gone under the twilight.

 

Only the twilight now, and the soft “Sh!” of the river

             That will last forever.

 

And at last I know my love for you is here,

I can see it all, it is whole like the twilight,

It is large, so large, I could not see it before

Because of the little lights and flickers and interruptions,

             Troubles, anxieties, and pains.

 

             You are the call and I am the answer,

             You are the wish, and I the fulfillment,

             You are the night, and I the day.

                          What else—it is perfect enough,

                          It is perfectly complete,

                          You and I.

Strange, how we suffer in spite of this!

 

D. H. Lawrence

From “Love Poems and Others”

1913

 

ヘネフにて

 

小さな川が薄明の中、ささやいている

青白く、おぼろな空は素晴らしい眺めだ

何という無上の喜び

 

万物が静まり返り、眠ろうとしている

全ての苦悩、懊悩、痛みは

行ってしまったのだ。薄明の中へと。

 

今は薄明と、そして川の優しくささやく音だけがある

それは永遠に続くだろう

 

そしてついに、私はあなたへの愛を今ここに感じ取る

私はそれを全て掴み取ることが出来る、この目の前の薄明のように

それは大きい。大きすぎて、だから気づかなかったのだ。

光が少なすぎたのだ、それにちかちかと瞬き、邪魔が入ってしまう

苦悩、懊悩、そして痛み。

 

あなたは「呼ぶ声」そして私は「答える声」

あなたは「希望」そして私は「満たすもの」

あなたは「夜」そして私は「昼」

何と言うことだ。完璧ではないか。

そう正に完璧。

あなたとそして私。

何と奇妙なことだ!それなのに、私たちは傷ついている!

7 comments on “Bei Hennef

    1. コメントありがとうございます!
      格調高い文語訳ですね!

      素晴らしい訳をありがとうございました!

  1. 私も訳してみました。まずは前半部分です。
    文語訳はハードルが高いので、口語です。
    最初のタイトルの「Bei Hennef」のBeiって何なのでしょうね?地名の一部?

    それと「SH!」の訳はささやくとしましたが、どうでしょうか?
    松本さんは「静かに!」の意味にとってらっしゃいましたね。

    ヘネフにて

    小さな川が薄明の中、ささやいている
    青白く、おぼろな空は素晴らしい眺めだ

      何という無上の喜び

    万物が静まり返り、眠ろうとしている
    全ての苦悩、心配、痛みは
      薄明の中へ消え去った

    今は薄明と、そして川のささやく音だけがある
      それは永遠に続くだろう

    そしてついに、私はあなたへの愛がここに今あることを知る
    私はそれを全て見ることが出来る、この薄明のように
    それは大きい、とても大きく、以前は見ることが出来なかった。
    少なすぎる光、明滅、妨害
      苦悩、心配、そして痛みがあったために。

  2. すてきな訳 ありがとうございます

    Bei Hennef の bei はドイツ語の前置詞なのかもしれない
    英語の by と同じような意味なのかな
    ドイツ語にくわしくないもので(どなたかくわしい方ご教示ください)…
    へネフもドイツの街の名前ですね
    この詩を書いたころ ローレンスは人妻のフリーダ(ドイツ人)と英国からドイツに駆け落ちしていたようです
    この詩の youはフリーダのことなんでしょうね

    よくわからなかったのは1行目のtwittering でした
    ふつうは鳥がさえずったり人がペチャクチャおしゃべりするするのに用いる言葉で
    川の音を表す例は初めて
    管理人さまは ささやく 私は さざめく としましたが…
    直後のtwilight と頭韻を踏んで音楽的な効果をねらったのかなとも思います
    頭韻といえば2行目 wan とwondering も
    シェイクスピアやE.A.ポーもそうですが 英詩は頭韻が好きですよね

  3. コメントありがとうございます!
    なるほどBeiはドイツ語ですか。
    Google翻訳によれば、英語のAtにあたるようですね。でも日本語の翻訳でそのニュアンスを汲み取るのは難しいですね

  4. ようやく時間が取れましたので、後半部も含めてもう一度訳しなおしてみました。

    ちょっと思い切った意訳も入っていますが、あまり厳密な正確さにこだわるよりも、やっていて面白いと思えるように。現代の日本語の詩として面白く読めるように意識したつもりです。

    ヘネフにて

    小さな川が薄明の中、ささやいている
    青白く、おぼろな空は素晴らしい眺めだ

      何という無上の喜び

    万物が静まり返り、眠ろうとしている
    全ての苦悩、懊悩、痛みは
      行ってしまったのだ。薄明の中へと。

    今は薄明と、そして川の優しくささやく音だけがある
      それは永遠に続くだろう

    そしてついに、私はあなたへの愛を今ここに感じ取る
    私はそれを全て掴み取ることが出来る、この目の前の薄明のように
    それは大きい。大きすぎて、だから気づかなかったのだ。
    光が少なすぎたのだ、それにちかちかと瞬き、邪魔が入ってしまう
      苦悩、懊悩、そして痛み。

    あなたは「呼ぶ声」そして私は「答える声」
    あなたは「希望」そして私は「満たすもの」
    あなたは「夜」そして私は「昼」
    何と言うことだ。完璧ではないか。
    そう正に完璧。
    あなたとそして私。

    何と奇妙なことだ!それなのに、私たちは傷ついている!

    1. 平明な言葉の 朗読にもたえる 達意の訳と思います
      ありがとうございます

      あらためて読んで感じるのは 薄明 twilight という言葉の豊かな全体性
      夜であるあなたと昼であるわたしを結びつけ その境界を溶解させ ひとつの全体性へといざなうものなのかもしれません

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