親と子

太鼓は空をゴム鞠にする

でんでん と太鼓の音が路からあふれてきて眠つてゐた子をおこしてしまつた

 

飴売は

「今日はよい天気」とふれてゐる

私は

「あの飴はにがい」と子供におしへた

 

太鼓をたゝかれて

私は立つてゐられないほど心がはずむのであつたが

眼をさました子供が可哀いさうなので一緒に縁側に出て列らんだ

 

菊の枯れた庭に二月の空が光る

 

子供は私の袖につかまつてゐる

 

尾形亀之助

雨になる朝」所収

1929

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください