生ひ立ちの歌

   Ⅰ

 

    幼 年 時

私の上に降る雪は

真綿のようでありました

 

    少 年 時

私の上に降る雪は

霙のようでありました

 

    十七〜十九

私の上に降る雪は

霰のように散りました

 

    二十〜二十二

私の上に降る雪は

雹であるかと思われた

 

    二十三

私の上に降る雪は

ひどい吹雪とみえました

 

    二十四

私の上に降る雪は

いとしめやかになりました……

 

   Ⅱ

 

私の上に降る雪は

花びらのように降ってきます

薪の燃える音もして

凍るみ空の黝む頃

 

私の上に降る雪は

いとなよびかになつかしく

手を差伸べて降りました

 

私の上に降る雪は

熱い額に落ちもくる

涙のようでありました

 

私の上に降る雪に

いとねんごろに感謝して、神様に

長生したいと祈りました

 

私の上に降る雪は

いと貞潔でありました

 

中原中也

山羊の歌」所収

1934

One comment on “生ひ立ちの歌

  1. 森羅万象、多情多感なり。

    命を肯定しうる言葉。

    いつしか心はひれ伏している。 

    いまだ失われていない 鼓動と体温の前に。

    他作 タイトルつけるならば‼『崩れ落ちる身体』

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