たそがれの美少女

紫の酒をたうべて醉ひしれぬ春の都は

夜は來る深き夜はいと妖艷に

うるはしき玉の如き燈火は點ず

辻々にゆきもどる若人のため

 

まだ殘る日のかげに遊べるあり

美しの少女あまた打群れて

その派手やかに着かざる衣裳は

人目を眩ず薄明り亂して

 

玻璃いろの人形めきたる

榮ちやんもたえまなく銀色のまりをつき

お手玉に燦爛と耽る子もあり

 

にほひよき薄明り美少女の群をたたへて

ただ消えゆくばかりなり春の夜に

時に燈火は叫ぶおごそかに「少女よ去れ」と

 

村山槐多

1919

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