街はいくさがたりであふれ
どこへいっても征くはなし 勝ったはなし
三ヶ月もたてばぼくも征くのだけれど
だけど こうしてぼんやりしている
ぼくがいくさに征ったなら
一体ぼくはなにするだろう てがらたてるかな
だれもかれもおとこならみんな征く
ぼくも征くのだけれど 征くのだけれど
なんにもできず
蝶をとったり 子供とあそんだり
うっかりしていて戦死するかしら
そんなまぬけなぼくなので
どうか人なみにいくさができますよう
成田山に願かけた
竹内浩三
「愚の旗」所収
1956
フィリピンから帰った父はちょうど作者と同じ年齢、父は幼馴染の母と結婚し33歳で病死。父も母も何も語らずゆきました。67歳になった私はこの詩で父と対話しています。