無題

冬こもり

春さり来れば

鳴かざりし

鳥も来鳴きぬ

咲かざりし

花も咲けれど

山を茂み

入りても取らず

草深み

取りても見ず

秋山の

木の葉を見ては

黄葉をば

取りてぞしのぶ

青きをば

置きてぞ嘆く

そこし恨めし

秋山われは

 

額田王

「万葉集」所収

759

One comment on “無題

  1. 万葉集の長歌って、昔読んだときいいなあと思って、もっと読まれていいなあと思ってます。ことばのリズムがたまらんです。秋が深まって虚無にむかうさきの希望のようなもの

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