ゆずり葉

子供たちよ。

これはゆずり葉の木です。

このゆずり葉は

新しい葉が出来ると

入り変わってふるい葉が落ちてしまうのです。

 

こんなに厚い葉

こんなに大きい葉でも

新しい葉が出来ると無造作に落ちる

新しい葉にいのちをゆずってーー。

 

子供たちよ。

お前たちは何をほしがらないでも

すべてのものがお前たちにゆずられるのです。

太陽のめぐるかぎり

ゆずられるものは絶えません。

 

かがやける大都会も

そっくりお前たちがゆずり受けるのです。

読みきれないほどの書物も

みんなお前たちの手に受け取るのです。

幸福なる子供たちよ

お前たちの手はまだ小さいけれどーー。

 

世のお父さん、お母さんたちは

何一つ持ってゆかない。

みんなお前たちにゆずってゆくために

いのちあるもの、よいもの、美しいものを、

一生懸命に造っています。

 

今、お前たちは気が付かないけれど

ひとりでにいのちは延びる。

鳥のようにうたい、花のように笑っている間に

気が付いてきます。

 

そしたら子供たちよ。

もう一度ゆずり葉の木の下に立って

ゆずり葉を見る時が来るでしょう。

 

河合酔茗

花鎮抄」所収

1946

 

2 comments on “ゆずり葉

  1. わ~、これ、教科書に載ってた詩ですよね。なつかしい。よい詩だなと思っていました。

  2. 現実、大都会が 添加物、科学物資まみれで
    人の免疫機能を奪ってしまい、
    人類絶滅の危機に瀕している事を除けば
    素晴らしい詩ですね。

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