何處へ行くのか

またしても

ごうと鳴る風

窓の障子にふきつけるは雪か

さらさらとそれがこぼれる

まつくらな夜である

ひとしきりひつそりと

風ではない

風ではない

それは餓ゑた人間の聲聲だ

どこから來て何處へ行く群集の聲であらう

誰もしるまい

わたしもしらない

わたしはそれをしらないけれど

わたしもそれに交つてゐた

 

山村暮鳥

風は草木にささやいた」所収

1918

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