裸になつてとびだし
基督のあしもとにひざまづきたい
しかしわたしには妻と子があります
すてることができるだけ捨てます
けれど妻と子をすてることはできない
妻と子をすてぬゆゑならば
永劫の罪もくゆるところではない
ここに私の詩があります
これが私の贖である
これらは必ずひとつひとつ十字架を背負うてゐる
これらはわたしの血をあびてゐる
手をふれることもできぬほど淡々しくみえても
かならずあなたの肺腑へくひさがつて涙をながす
八木重吉
「定本八木重吉詩集」所収
1927