自然に、充分自然に

草むらに子供はもがく小鳥を見つけた。

子供はのがしはしなかつた。

けれども何か瀕死に傷いた小鳥の方でも

はげしくその手の指に噛みついた。

 

子供はハツトその愛撫を裏切られて

小鳥を力まかせに投げつけた。

小鳥は奇妙につよく空を蹴り

翻り 自然にかたへの枝をえらんだ。

 

自然に? 左様 充分自然に!

――やがて子供は見たのであつた、

礫のやうにそれが地上に落ちるのを。

そこに小鳥はらくらくと仰けにね転んだ。

 

伊東静雄

詩集夏花」所収

1940

2 comments on “自然に、充分自然に

  1. いつも楽しみに拝読しております。ところで、伊東静雄です、伊藤ではなく。自動変換だと、どうしても、こうなってしまいますが・・・

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