ヤマグチイズミ

きけば答えるその口もとには

迷い子になってもその子がすぐに

戻って来る筈の仕掛がしてあって

おなまえはときけば

ヤマグチイズミ

おかあさんはときけば

ヤマグチシズエ

おとうさんはときけば

ヤマグチジュウサブロウ

おいくつときけば

ヨッツと来るのだ

ところがこの仕掛おしゃまなので

時には土間にむかって

オーイシズエと呼びかけ

時には机の傍に寄って来て

ジュウサブロウヤとぬかすのだ

 

山之口貘

山之口獏詩集」所収

1940

 

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