広漠たる原野

背に夕陽をうけて 軽快に

飛んでいた 鴉が

突然 死んだ

鴉は高い空から垂直に落下した

と同時に

あかねいろにそまった野の地平線から

彼の大きな影が

目にもとまらぬ速さで

じぶんの死骸にかけこんできた

この地球に偉大な影を落していた鴉は

心臓マヒだった

 

蔵原伸二郎

蔵原伸二郎選集」所収

1965

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