知るや君

こゝろもあらぬ秋鳥の

声にもれくる一ふしを

        知るや君

 

深くも澄める朝潮の

底にかくるゝ真珠を

        知るや君

 

あやめもしらぬやみの夜に

静にうごく星くづを

        知るや君

 

まだ弾きも見ぬをとめごの

胸にひそめる琴の音を

        知るや君

 

島崎藤村

若菜集」所収

1897

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください