ひとり林に・・・

だれも 見てゐないのに

咲いてゐる 花と花

だれも きいてゐないのに

啼いてゐる 鳥と鳥

 

通りおくれた雲が 梢の

空たかく ながされて行く

青い青いあそこには 風が

さやさや すぎるのだらう

 

草の葉には 草の葉のかげ

うごかないそれの ふかみには

てんたうむしが ねむってゐる

 

うたふやうな沈黙に ひたり

私の胸は 溢れる泉! かたく

脈打つひびきが時を すすめる

 

立原道造

立原道造全集第一巻」所収

1941

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