不滅なものは信用できない
おお、ぼくの友だち、絶望が不当に傷つけたさびしい少年
つらいぼくの夢はおわったさ
ながーい不信がかがやかす
荒廃した郊外いっぱいひろがった夢
夢はいつだっておわったあとで夢みられる夢だぼくは
もうすでに出立したんだこのぼくのなか
みえっこないほど深いセンチメンタル・ジャーニー
知らなかったかい?ぼくは
終始いつだって誰れでもなかった誰れひとり
ほんとうにぼくたちの誰れであることもできなかった
それでもはじめるしきゃなかったんだよ、ぼく
狂気と永遠を区別することから
純潔と性的倒錯を熱烈に混ぜあわせることから
恐怖だけが純潔だなんて!くそっ
そいつをかんがえると口惜しくなってきて
ああ、ほとんど泣きだしちまいたくなるくらいなんだなあ
ぼくがおしまいまで巧くやってゆけないかどうか
そんなことぼくがどうして知るもんか
ちぇ、どんないろしてるんだろ?ぼくの
怒りや焦りやたまんない衝動のいろ?
ぼくの知らないぼくの青春の
皮膚のいろって、え?
ぼくは探した探した探した
探しためまいのするほどぐるぐる廻って
おおきな積木とちいさな影のあいだで
一日じゅうケンケンをしてくたびれきった
子供たちのようにくたびれるまで
探した探したこのぼくがいまここにいる
場所と名まえ
長田弘
「メランコリックな怪物」所収
1973