破片は一つに寄り添はうとしてゐた
亀裂はいま微笑まうとしてゐた
砲身は起き上つて
ふたたび砲架に坐らうとしてゐた
みんな儚い原形を夢みてゐた
ひと風ごとに砂に埋れて行つた
見えない海
候鳥の閃き
丸山薫
「帆・ランプ・鷗」所収
1932
破片は一つに寄り添はうとしてゐた
亀裂はいま微笑まうとしてゐた
砲身は起き上つて
ふたたび砲架に坐らうとしてゐた
みんな儚い原形を夢みてゐた
ひと風ごとに砂に埋れて行つた
見えない海
候鳥の閃き
丸山薫
「帆・ランプ・鷗」所収
1932