梨の花の揺れた時

隣の小さな男の子は
藁のはみ出た人形を紐で背負い
梨の木をのぼっていったのでした

いちばん綺麗な空の色のリボンを結んで
白い花の揺れるのを
不思議な思いで眺めながら
私は葉ずれに答えました

その小枝に腰かけて
隣の小さな男の子は
私に笑いかけました

藁のはみ出た人形を紐で背負い
梨の木をのぼっていったのでした

隣の小さな男の子は
死ぬつもりだったのでしょう

吉行理恵
幻影」所収
1971

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