頭痛の酷い昼下がりに
あなたのために
シャツにアイロンをかける
一万円札の皺を伸ばして
さびれた郵便局へと
絵を受け取りにあてどなくあるく
あなたのために
柔らかいこのひざを折る
わたしはわたしで
ひとりのにんげんでいたいのに
嘶くような
あなたの叫びにまたしても負けて
あなたが描いた私の裸体を
頬を染めつつ
寝室の奥まったところに飾る
あなたは今どこで
すきっ腹を抱えながら
くらい川を眺めているのか
おんな一人でしゃにむに
生きてきたわたしの在りようは
蟻の如きものと知り
せめてひかる台所に立ち
季節外れの秋刀魚を丁寧に焼く
葉山美玖
「Something」26号より。一部改訂。
2017
雨の秋刀魚は葉山さんの許諾を頂いた上で掲載しております。
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