アウシュヴィッツ以後、詩を書くことは野蛮である。そしてそのことがまた、今日詩を書くことが不可能になった理由を語り出す認識を侵食する。絶対的物象化は、かつては精神の進歩を自分の一要素として前提したが、いまそれは精神を完全に呑み尽そうとしているから、
私たちは詩を書こう
それとも
聖母マリアを強姦しに行こうか
首を吊られたくなかったあなたが
首を吊りたくない私に
何かを語りたがる夜
私は雨に溶ける街を歩く
踏切の向こうを
轟音をたてて通り過ぎる列車の野蛮
それを送りだした勤勉な駅員の制服
小林多喜二が虐殺された時空で
ジョバンニがカンパネルラに
思想とは無思想だと
無思想にしか思想はないのだと
それでも無思想は思想なのだと打ち明ける
だから私は
雨の夜、凍えながら
星の下を歩く
蛾兆ボルカ
現代詩投稿サイト「B-REVIEW」より転載
2018
「夜」は現代詩投稿サイトB-REVIEWで2018年3月大賞に選ばれた作品です。
B-REIVEWは現代詩の投稿サイトで、掲示板による詩の合評を行っています。今、大変熱く盛り上がっています。
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当サイトでは、その内の幾つかを掲載させていただくことになりました。協力しあいながら、現代詩の世界を広げていけたら、と思っております。