骨片の歌

ーそれよりもいつそ自分が自分を片づけた方がましだ。少くともいつ、どんな風に死ぬかといふことがわかるし、それに、どこに穴をあけるか自分で場所をえらぶ自由もある。
ツルゲーネフ「処女地」

灰で固めた骨片は、
すつても火がでない。

骨よ。おぬしが人間の
最後の抗議といふものか。
なにを叩く。誰をよびさます。
その撥で
骨は、骨のうへで軽業しながら
骨になつた自由をたのしんで、
へうきんに踊りながら答へた。
ーみそこなふなよ。俺さまを。
とつくりそばへよつて嗅いでみな。

かびくさいのは二束三文の
張三の骨、呂四の骨。
薬の毒のしみこんだ紫の骨、
いんばいの骨、のんだくれの骨。
あかがねくさい政治家の骨。
きちがひ茄子のにほふのは、あれは
戦にひつぱり出されたものの骨。
だが飛切上等の骨。
こいつを一つ嗅ぎわけてくれ。
気にいらぬ人生に楯ついて
おのれでおのれを処分したものの骨には
伽羅がにほふ。伽羅がにほふ。

金子光晴
鬼の児の唄」所収
1949

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