初聖体

或る朝のこと私は病室の窓から
見馴れない少女達の波のような一群れを
遠いい庭の芝草の上に見た。
だが、私がやがて御堂の入り口に立ったとき、私は今一人の少女が
その初聖体を受けようとしていることを知った
そうして波のようなあの少女達の一群れは、
その病んだ一人の少女の初聖体を祝う
多くの友であったことを。
私はいつからか見知っていた。
その少女の祈る様を、編まれた髪を、
又病んだその頬の色を。
だが今初めて真っ白なベールに飾られたその少女の姿は、
祭壇のマリアの御像のようにさえ美しく思われた。
そうして私はいつか思い出していた
街中桜の花びらが散っていて
乳母車を押してゆく若い母親達が、
誰もみんな天使のようにさえ美しく思われた
あの御復活祭の日の私の初聖体のことを。

野村英夫
「野村英夫詩集」所収
1953

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください