蜜蜂のようなものが しきりと
私のなかを 出たり入ったりする
何かを持ち込んだり
何かを持ち出したりしている
それらを私は黙って見ている
それらは私の小さな思考のようである
智慧のように草の葉の光るなかに
歩きくたびれて腰をおろした私は
そしてまた見る 大きな翼を
みるみる空遠く飛翔して行く翼を
翼だけ大きく 胴が小さいが
小さい筈だ それはさっき私が投げすてた
携帯用の人生案内書なのだ
高見順
「わが埋葬」所収
1965
蜜蜂のようなものが しきりと
私のなかを 出たり入ったりする
何かを持ち込んだり
何かを持ち出したりしている
それらを私は黙って見ている
それらは私の小さな思考のようである
智慧のように草の葉の光るなかに
歩きくたびれて腰をおろした私は
そしてまた見る 大きな翼を
みるみる空遠く飛翔して行く翼を
翼だけ大きく 胴が小さいが
小さい筈だ それはさっき私が投げすてた
携帯用の人生案内書なのだ
高見順
「わが埋葬」所収
1965