初めて子供を
草原で地の上に下ろして立たした時
子供は下ばかり向いて、
立つたり、しやがんだりして
一歩も動かず
笑つて笑つて笑ひぬいた、
恐さうに立つては嬉しくなり、そうつとしやがんで笑ひ
その可笑しかつた事
自分と子供は顔を見合はしては笑つた。
可笑しな奴と自分はあたりを見廻して笑ふと
子供はそつとしやがんで笑ひ
いつまでもいつまでも一つ所で
悠々と立つたりしやがんだり
小さな身をふるはして
喜んでゐた。
千家元麿
「自分は見た」所収
1918
初めて子供を
草原で地の上に下ろして立たした時
子供は下ばかり向いて、
立つたり、しやがんだりして
一歩も動かず
笑つて笑つて笑ひぬいた、
恐さうに立つては嬉しくなり、そうつとしやがんで笑ひ
その可笑しかつた事
自分と子供は顔を見合はしては笑つた。
可笑しな奴と自分はあたりを見廻して笑ふと
子供はそつとしやがんで笑ひ
いつまでもいつまでも一つ所で
悠々と立つたりしやがんだり
小さな身をふるはして
喜んでゐた。
千家元麿
「自分は見た」所収
1918