この心は棄てられない。
いくら夢だときめていても
頑としてそこに居る。
自分のものか誰かのものか、
何しろからだの中に自活してゐて、
何処か見えない無数の天体と
あけくれ幾千年の合図をしてゐる。
ルウアンで焚き殺されたあの少女の
心臓だけが生でゐたとはほんとらしい。
己のからだも君のからだも彼のからだも、
この心にはかなはない。
いくら夢だときめてみても、
頑としてそこに居る。
手におへない。
高村光太郎
「高村光太郎詩集」所収
1928
この心は棄てられない。
いくら夢だときめていても
頑としてそこに居る。
自分のものか誰かのものか、
何しろからだの中に自活してゐて、
何処か見えない無数の天体と
あけくれ幾千年の合図をしてゐる。
ルウアンで焚き殺されたあの少女の
心臓だけが生でゐたとはほんとらしい。
己のからだも君のからだも彼のからだも、
この心にはかなはない。
いくら夢だときめてみても、
頑としてそこに居る。
手におへない。
高村光太郎
「高村光太郎詩集」所収
1928