僕は
叫んでしまいました
夢で 追いかけられたときは
浅葱色のクッションが 蹲らせてくれたけれど
それが かくれてしまったから
鈴蘭のにおいの立ちこめている 場所で
山鳩の魂は 遊んでいるでしょう
藤棚に
山鳩の羽は 紛れこんでいるけれど
硝子窓に つめをとぎにやってくるのは
山鳩をつかんで
飛び上がっていった脚?
いつ
月見草は
飛び上がろうとしてみましたか?
電燈をつけ忘れられた暗闇で
新聞紙の
飛行機を折っていたときに
僕は
叫んでしまいました
吉行理恵
「吉行理恵詩集」所収
1970