それはまたひとつの失意のやうにたちどまる
純金の葉飾りに縁取られて
イタリヤのcameeのやうに
朝の十時の
軽い響きのなかに
あなたは哀しくたちどまる
ぼくの思ひ出の瑪瑙のなかに
きびしい怨恨の裂目をのこして
ああ
冷い風とともに
紫に暮れていく日日の眼にしみる思ひよ
ひとりプロムナアドの
かたい陰影に気をとられながら

北園克衛
砂の鶯」所収
1951

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください