みんなが傷口をもってゐる
<炎える母>を読みかへして
はじめて泣いた
他人にも傷がある そのことで
救はれるときが たしかにある
でも
わたしの傷が 誰を救ふだらうか
蝶から空を
空から蝶を
奪った
鱗粉があたりに散ってゐる
くもは 頭を垂れる
いまこそ 大きなやさしさになりたい
傷みごと そのための爪ごと
すべてを包みたい
神の出番だ
吉原幸子
「昼顔」所収
1973
みんなが傷口をもってゐる
<炎える母>を読みかへして
はじめて泣いた
他人にも傷がある そのことで
救はれるときが たしかにある
でも
わたしの傷が 誰を救ふだらうか
蝶から空を
空から蝶を
奪った
鱗粉があたりに散ってゐる
くもは 頭を垂れる
いまこそ 大きなやさしさになりたい
傷みごと そのための爪ごと
すべてを包みたい
神の出番だ
吉原幸子
「昼顔」所収
1973