不運

京都 雨
名古屋 雨
静岡 雨
そして横浜も 雨
十年ぶりの旅行だったが
さんざんだった
雨に降られどうしで
ちっとも陽の目をみなかった
何のことはない 列車が
西から東へ雨雲といっしょに走っていたのだ
ゆくさきざきが雨で
後からあとから晴れていったのだ

不運
不運
何というまわりあわせのわるさ
ぼくの人生とそっくり同じだ
輝かしかった明治の老人と
明るい昭和の若者の
まんなかの谷間で
ぼくら大正生まれは嵐にずぶ濡れできた

大木実
月夜の町」所収
1966

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