友だちを送りに
久しぶりであの火葬場に行った。
いまから四十年前
私の四歳の妹も同じ鑵で焼かれた。
その時も
庭にあの木が立っていた。
木には目がついていないのだろうか。
それとも目をつむっているだけなのだろうか。
それなら目をさましたとき
びっくりするだろう。
とんだことをした
わたしは重大なことを見すごしてきたと。
古い木だなあ、とおもった
こんど行ってみて。
いろんな人の死に
立ち会った木である。
このでくのぼうめ
お前は私のようだ
死の意味を知らずに突っ立っている。
木がつぶやいた
たぶん、ね
お前がはこばれてきたら目をあけるよ。
石垣りん
「略歴」所収
1979