夜ふけ、ふと目をさました。
私の部屋の片隅で
大輪の菊たちが起きている
明日にはもう衰えを見せる
この満開の美しさから出発しなければならない
遠い旅立ちを前にして
どうしても眠るわけには行かない花たちが
みんなで支度をしていたのだ。
ひそかなそのにぎわいに。
石垣りん
「表札など」所収
1968
夜ふけ、ふと目をさました。
私の部屋の片隅で
大輪の菊たちが起きている
明日にはもう衰えを見せる
この満開の美しさから出発しなければならない
遠い旅立ちを前にして
どうしても眠るわけには行かない花たちが
みんなで支度をしていたのだ。
ひそかなそのにぎわいに。
石垣りん
「表札など」所収
1968