コオロギが

コオロギが鳴いている
のを 私がききほれている
のを コオロギは知らない
と 私が思っている
のは けれどコオロギにかぎらない
空をとぶ小鳥にでも
道ばたに咲く草花にでも
どんな物にでもなのだ
一方的であるほかないのだ
いつだって人間は
と 私が考えている
のを しげしげと見おろしている
あの星空のはるかな所から
私の知ることのできない何かが
かぎりなく一方的に
と だけは私にも思わせて
コオロギが鳴いている

まど・みちお
まめつぶうた」所収
1973

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