毎日
胃袋を覗く
せせっこましい暗室の中で
白い鈎形の影の
臍から何寸下がっているから
あなたの胃袋は病気だと
前後 左右に
おしつけ こすりあげる
黄変米をこなし
雑魚をくらい
MSA小麦を喰いつくした
白い影が
目の前でゆれる
何十年かを生き抜いた
君の胃が
飲み
くらい
こなしつづけたものが
どれだけ
君の肉であり
君の知恵であったか
君の胃は
何十年
日本の政治の排泄物をくらいつづけてきた
そして
胃は
むくみ ただれ
あげくの果ては
このほじくれた激痛の
悔恨に似た穴だ
世の中の
巨大な胃袋のなかで
僕は
どろどろに溶かされながら
白い鈎形の影を追いつめる
御庄博実
「御庄博実詩集」所収
1987