男の子って
どうして雲がすきなのかしらね
おばさん 小さな女の子だったけれど
こんなにおばさんになってもまだ
わからないわ どうしてなの?
雲ってね おばさん
未来とか とおい国とか まだ出会わないひととか
なんだかそういうものを感じさせるんだ
だから雲を見ながら
夢を見ているのさ男の子は──
それじゃ小さな雲だったら
小さな夢なの?
大きな大きな黒雲だったらどうなのよ
嵐が来るかもしれないのに──
どうしても わかってくれない
白い ふっくらした
雲みたいなぼくのおばさん
辻征夫
「ボートを漕ぐおばさんの肖像」所収
1992