軽いロマンス

菫の花の匂ひのする
若いアミの傍で
洒落たグライダアについて考へる

「僕のグライダアを何いろに塗らうかな」
「ゴリラいろにお塗りなさい」
お ゴリラいろのグライダアは釘抜きのやうに空をすべり
一杯の熱い珈琲が
僕たちの意味ないわらひを温める

友よ
かうしたひと時の
またかへらない淡い日を惜しみ
ちひさな町の公園を横切つたことがあるか
それは落葉にみちた

北園克衛
「定本・若いコロニイ」所収
1932

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