林檎の香

季節は老いゆく ゆるやかに
ひと日ひと日の陽のきらめきを
樹樹の根かたに蒼くしづめながら

時は透明な火となり樹の管をのぼる
なか空にひろがる枝枝の網目に
まろやかな果實を熟れさせるために

老いた季節は ある夜ひそかに
しろがねの夢を吐瀉してたち去る
果肉のなかに 凍る香りをとどめて

那珂太郎
「空我山房日乗其他」所収
1985

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