明るい歌声のようにさざめいていた
花嫁の冠はもう取られただろうか?
そうして人生の悲しみも
もう一つ位は見知っただろうか?
たとえば愛する者の心を見失いかけたとか
幼い者の病むさまとか
時には神様が
それらの者をお召しにさえなろうとしたとか。
そうしてもう気附いただろうか?
墓地のたくさんの十字架の下には
見捨てられた不幸せな魂も
眠っていることを。
そうしてもう見ただろうか?
かつて愛したものの幸せかどうかと言う
それらの死者達の問いたげな眼なざしを。
野村英夫
「野村英夫詩集」所収
1948