古ぼけて煤けた駅であった その窓硝子も煤けていた よく駅夫が熱心に拭っていたが すぐもとにもどっていた ある夜のこと その一枚が 戸外の闇までつやつや見える位美しくすき透っているのを見た 近づくと硝子は割れてはづれていたのだった 煤けた彼が 何年かねがい 努め 悩んだものが そのようにして解決されていた 戸外の闇から凍った冬の夜風が吹きこんでいた
杉山平一
「ぜぴゅろす」所収
1977
古ぼけて煤けた駅であった その窓硝子も煤けていた よく駅夫が熱心に拭っていたが すぐもとにもどっていた ある夜のこと その一枚が 戸外の闇までつやつや見える位美しくすき透っているのを見た 近づくと硝子は割れてはづれていたのだった 煤けた彼が 何年かねがい 努め 悩んだものが そのようにして解決されていた 戸外の闇から凍った冬の夜風が吹きこんでいた
杉山平一
「ぜぴゅろす」所収
1977