やがて地獄へ下るとき
そこに待つ父母や
友人に私は何を持って行かう

たぶん私は懐から
蒼白い、破れた
蝶の死骸をとり出すだろう
さうして渡しながら言ふだろう

一生を
子供のやうに、さみしく
これを追ってゐました、と

西條八十
「美しき喪失」所収
1929

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